同調圧力2.0

 
同調圧力という言葉をネットで検索すると、「集団において、少数派の人に対して周囲の多くの人と同じように考え行動することを暗黙のうちに強制すること」とありますが、社会生活の中でこのような概念が当たり前のように存在することに違和感を覚えます。
 
 
多くの人と同じように考え行動することを是とする環境で育った人間は自分の意思を発信することを諦めてしまい、そのことが個人の価値観や自我を形成する上で大きな弊害となる為、良くも悪くも均一で突出したものが無い綺麗に整った人間になる事でアイデンティティーの確立が困難になってしまう。
その結果、多数派の意見や思想、行動に寄り添わなければ否定され拒絶されるという恐怖から人目を気にしてさらに同調行動を繰り返し、均一な個人による集団や組織が形成され、社会全体が均一になってしまう。
果たしてそのような社会の在り方は今の時代にマッチしているのでしょうか。
 
 
日本で同調圧力の意識が強まった大きな理由として「和の文化」と「村社会」があります。
皆で力を合わせて効率よく作物を収穫する為に協調性を重視する事はとても大切で、村の秩序を保つ為に決められた規則に反した者は村八分という罰則を受けました。
そうする事で団結して農業を進めてきたのが歴史が同調圧力のルーツであると言えます。
しかし、この時代の人達に村八分という罰則が必要だったのは、協力して必要な分の食料を収穫しなければ明日を生きていく事すら出来ないという過酷な現実があったからではないでしょうか。
 
 
製品を大量に作って良いものを出来るだけ安く売る。
年功序列で終身雇用があり、勤め続ければ昇級していく。
そのようにして成長してきたこれまでの日本は、企業や人の在り方、人生の形や存在意義がある意味明確で限られていました。
この時代の生き方を極端に例えると2Dゲームようなもので、縦か横に進み目の前に現れた敵を次々となぎ倒しながらゴールへ向かうようなイメージです。
 
 
 しかし今は違います。
 
 
既に便利な製品が安価で手に入る為それも飽和している状態であり、そこに多種多様なサービスが介在していて、グローバル化IT技術の進化で企業間のパワーバランスも不安定な状態にあり、終身雇用は崩壊するかもしれないというニュースも目にするような時代です。
会社に就けば一生安泰という言葉も信憑性が欠けてきています。
あらゆるものが不安定で多様性に富んだ今の時代に万人が模倣すべき正しい考え方や、生き方など無いのではないでしょうか。
 
 
だからこそ私達は人生を2Dではなく3Dとして捉えていかなければなりません。
 
決められたストーリーをクリアしてエンディングを迎えるのではなく、360度どこまでも自由に移動できるフィールドの中で自分だけのオリジナルストーリーを作り続けなければならない。
 
 
人生のプレイヤーであり、クリエイターであり続けなければならない。
 
 
 
そのような人の生き方、社会の実現の為に必要なのは「同調圧力」では無く「和の文化」です。
「空気を読む事」と「和を大切にする事」を混同させると、同調圧力があるからこそ秩序が保たれているのでは無いかといった意見が湧いてくることになるので混同させないようにしましょう。
 
同調圧力とは前述したとおり「集団において、少数派の人に対して周囲の多くの人と同じように考え行動することを暗黙のうちに強制すること」です。
対して和を大切にするとは「互いの意思を尊重し、妥協点を見つけ出し受容する事」です。
 
他者の意見に対して、疑問や不満を持ちつつも賛同するのが「同調圧力」で、不満を言った側と聞いた側がしっかりと話し合い、より高度な意見を生み出した上で互いに協力するのが「和を大切にする」という事です。
 
たとえ結果が同じになったとしても、「和」の過程があるか無いかで大きな差が生まれるということは想像に難くないと思います。
 
 
全ての個人が尊重され、より良い社会になっていくために古くから受け継がれてきた日本人にとって大切な「和」について改めて考えていかなければならない時代になっているのではないでしょうか。